【IT部門が教える】今さら聞けない販売管理システム全知識と選定ポイント

販売管理システムとは、主に販売管理業務、在庫管理業務、購買管理業務を支援・効率化するためのシステムです。これらの業務を効率化するための多くの機能を備えています。販売管理システムは、企業の業務を担う中心システムと言っても過言ではありません。

販売管理システムの導入は失敗が多い領域でもあります。しかし、おさえておくべき基礎知識や選定のポイントを詳しく解説した記事は多くありません。実は、選定のポイントはたった3つです。

そこでこの記事では、販売管理システムの概要やメリット、主な機能、選定ポイントなどをシステム部門で数多くのシステムの導入を経験したプロの視点からどこよりも詳しく解説します。販売管理システムの導入やリプレイスを予定している方は、この記事を参考にして下さい。

1.販売管理システムとは

販売管理システムとは、主に「販売管理業務」「在庫管理業務」「購買管理業務」を支援・効率化するためのシステムです。売上高が1億円を超える企業では、ほぼすべての企業に導入されています。

販売管理業務、在庫管理業務、購買管理業務は業務内容が多岐にわたり、泥臭い作業も少なくありません。販売管理システムを活用すると以下のような課題を解決できます。積極的に販売管理システムを活用しましょう。

解決できる主な課題

  • 業務フローが確立しておらず人為的なミスが多い
  • 社員の稼動が常に高く残業が多い
  • 情報が一元化されておらず、部門間でのコミュニケーションに時間を取られる

2.業種・業態別の販売管理システム

販売管理システムの基本機能は、「販売管理機能」「在庫管理機能」「購買管理機能」ですが、業種や業態によって細かい機能や使う機能が異なります。売上高1,000億円を超えるような大企業はSAPなどの大企業向けERPをカスタマイズして使うのが基本ですが、中小企業は業種・業態向けの販売管理システムを使うのが主流です。

2.1.BtoB事業

販売管理システム概要(BtoB事業)

2.2.BtoC事業

販売管理システム概要(BtoC事業)

2.3.BtoB/BtoCマルチチャネル事業の例

販売管理システム概要(マルチチャネル事業)

3.販売管理システムの4つのメリット

3.1.業務の効率化・業務コストの削減

販売管理システムを活用することで業務を大幅に効率化し、業務コストを削減することができます。
例えば、販売管理業務では取引先ごとに見積書の発行、受注処理、出荷処理、売掛金管理、請求処理など業務が多岐にわたります。それぞれの業務で発声するデータ入力やデータ管理は非常に煩雑になりがちですが、関連する業務全体を効率化するために作られた販売管理システムを活用することで業務を効率化することができます。

3.2.業務の標準化

販売管理システムを活用することで、業務の順番やデータの入力、管理方法が統一され業務を標準化することができます。例えば、システムが導入されていない場合、各業務の進め方や管理すべき情報の管理は完全に担当者に属人化し、人によって業務品質に大きな差が生まれてしまいます。

販売管理システムを活用することでこれら属人化する作業を標準化することができます。ただし、導入するだけで簡単に標準化されるわけではありません。導入時に業務フローをしっかり整理し、どのようにシステムを使って業務を行うのかしっかり教育し定着化させる必要があります。

3.3.データの統合・全社共有

販売管理システムを活用することで、業務全体のデータを統合し全社的に共有することができます。例えば、受注→出荷→請求という単純な流れでも、受注は営業が担当、出荷・在庫コントロールは物流担当、請求は経理担当と関連部署が多岐にわたります。アナログで業務を行っていた場合、各部門とのデータ共有やコミュニケーションコストも馬鹿になりません。データが統合・全社共有されることで、部門間での不要なコミュニケーションも減り効率化が進みます。

3.4.経営情報の可視化

データが統合されることにより経営に必要な情報を可視化することができます。例えば、経営層がリアルタイムに全社の売上や債務状況を見たり、マネージャ層や現場が瞬時に在庫状況を把握したりすることができます。瞬時に最新情報を得る事で素早い経営判断につなげることができます。

このように販売管理システムを導入することにより得られるメリットは多岐にわたります。

販売管理システムの良いところは、現場業務を効率化するだけでなく経営に必要な数値データが一元的に管理され、瞬時に取り出せる事です。販売管理システムを活用し経営の品質を改善しましょう。

4.販売管理システムのデメリット

販売管理システムを導入することにより発生するデメリットはほとんどありません。あえてデメリットを上げるとすれば、「システムコストが掛かる」ことです。従業員50人以上の中小企業向けのものでも、オンプレミス型で5年で数百万円~1千万以上はコストが掛かります。

また、業務コストの削減はできますが、売上増大に直接貢献する仕組みでもありません。その事をおさえておきましょう。

5.販売管理システムの主な機能 -機能一覧-

5.1.販売管理機能

見積機能

  • 見積入力
    見積情報の入力や見積を作成する機能
  • 見積書印刷
    見積書を印刷する機能。多くの製品でPDFやExcelでの出力ができます。
  • 見積検索
    見積情報を検索し一覧表示する機能

受注管理機能

  • 受注入力
    受注情報を入力する機能です。パッケージによっては見積情報から自動、または簡易的に受注情報を作れるものもあります。
  • 印刷
    注文請け書を印刷する機能。多くの製品でPDFやExcel出力できます。
  • 受注検索
    受注情報を検索・一覧表示する機能。進捗などステータス登録できるパッケージもあります。
  • 受注データ取込
    ExcelやCSVから受注データを取込む機能。多くの企業で、EDIなどと連携させて取引先のデータを自動取込みしています。

売上・売掛管理

  • 売上入力
    売上情報を入力する機能。BtoBビジネスで主に使う機能。
    受注データから自動、または簡易的に作成することもできます。BtoCであれば、POSからデータ連携するケースが一般的です。BtoBビジネスの場合、こ売掛データも自動作成します。
  • 売上検索
    取引先や期間など様々な条件で売上を検索し一覧表示する機能
  • 売上集計
    取引先や期間など様々な条件を指定して売上情報を集計する機能。
    簡易的な集計がメインで、複雑な集計はBIツールなどにデータ連携し行うのが一般的です。
  • 売上データ取込
    ExcelまたはCSVなどから売上データを取込む機能
  • 売上データ出力
    売上データの明細や集計されたデータをExcelまたはCSVに出力する機能

請求管理

請求管理機能は多くの販売管理システムに搭載されていますが、販売管理システムの請求管理機能は一般的に弱いため、会計システム側で管理したり別途請求管理システムを導入したりして業務を行うケースも多くあります。

  • 債権検索
    未回収の債権データを検索し一覧表示する機能。期間や取引先、ステータスなど様々な検索条件で検索できるパッケージがほとんどです。
  • 入金処理
    入金登録し債権の消し込みを行う機能
  • 請求書印刷
    請求書を印刷する機能。ExcelやPDFで出力できるパッケージもあります。

5.2.購買管理機能

発注管理

  • 発注入力
    発注情報を入力する機能
  • 注文書印刷
    注文書を印刷する機能。ExcelやPDFで出力できるパッケージもあります。
  • 発注検索
    取引先や期間など様々な条件で発注情報を検索し一覧で表示する機能

仕入管理

  • 仕入予定入力
    仕入予定情報を入力する機能。発注情報をもとに自動作成してくれるパッケージも多くあります。
  • 仕入検索
    様々な条件で仕入情報を検索、一覧で表示する機能
  • 仕入確定
    仕入を確定し在庫計上する機能。この時買掛データも自動作成します。
  • 仕入取込
    ExcelまたはCSVなどで仕入データを取込む機能。この時在庫の計上と買掛データの作成を自動で行います。物量が多き企業は、通常倉庫システム(WMS)から送られてくる入荷データを取込むことで仕入計上します。

出荷管理

  • 振分処理
    仕入予定または在庫をもとに出荷先ごとに商品と出荷数を振分ける機能。Excelから振分データを取込めるパッケージも多くあります。出荷先ごとに優先度をつけ、優先度順に振分けるなど便利なシステムが多くあります。
  • 出荷指示入力
    出荷指示を作成する機能。振分データから作成できるパッケージも多くあります。一般的に、振分していなくても出荷指示の作成は可能です。
  • 出荷確定
    出荷指示を確定する機能。確定すると在庫が引き落とされ積送中になります。倉庫システム(WMS)と連携している場合、出荷確定すると倉庫へ出荷指示が送信されます。
  • 出荷指示出力
    出荷指示を印刷または、ExcelやCSVで出力する機能。

入荷管理

  • 入荷予定入力
    入荷予定を入力する機能
  • 入荷実績入力・取込み
    入荷実績数の入力や取込みを行う機能。ハンディーターミナルからデータを連携し取込むことができるパッケージも多くあります。
  • 入荷確定
    入荷実績数の確定を行う機能。入荷確定すると在庫計上されます。倉庫システムWMSと連携している場合、倉庫から実績データを取込んだ際に自動で確定され在庫計上されます。

債務管理

債務管理機能は多くの販売管理システムに搭載されていますが、一般的に販売管理システムに搭載されている債務管理機能は弱いため、会計システム側で管理するケースが一般的です。 

  • 債務検索
    様々な検索条件から未払いの債務データを検索し一覧表示する機能
  • 支払依頼
    債務の支払依頼をする機能
  • 支払処理
    支払した伝票の消し込みを行う機能

5.3.在庫管理機能

検索

  • 在庫検索
    在庫情報を検索し一覧表示する機能
  • 受払い検索
    店舗別、商品別、SKU別などで商品の受払い(入荷、出荷、移動、返品、償却など在庫の動き)履歴を検索・表示する機能
  • 在庫一覧出力
    在庫一覧の印刷やExcel・CSVで出力する機能

棚卸

  • 棚卸
    店舗や倉庫を指定して棚卸を開始する機能。棚卸中の店舗や倉庫は、通常在庫数が変動する操作ができなくなります。
  • 棚卸入力
    棚卸結果を入力する機能。ハンディーターミナルと接続して在庫数を入力することができるパッケージもあります。
  • 棚卸実績取込み
    ハンディーターミナルでスキャンして作成した棚卸データや倉庫システム(WMS)から送信されてきた棚卸データを取込む機能。
  • 棚卸確定
    棚卸実績を確定し在庫を更新する機能

在庫調整

  • 在庫調整
    在庫数を実数に合わせて更新する機能。調整理由の登録も可能となっている製品がほとんどです。棚卸時にシステム上の在庫と実在庫に差が出た場合などに使います。
  • 在庫償却
    在庫を償却する機能

この章では、販売管理機能に備わる主な機能について解説してきました。「1.1.販売管理システムの概要」でも述べましたが、販売管理システムの機能は業種や業態によって細かい機能が異なります。上記基本機能以外に自社の業務で必要な機能を洗い出しましょう。

6.販売管理システムの選び方~3つのポイント~

6.1.業界・業態特化型を選ぶ

販売管理システムは、業界・業態特化型のパッケージを選ぶのが基本です。販売管理業務は、業界や業態によって業務や管理すべき情報が大きく異なります。大手企業は汎用型のパッケージを自社業務に合わせてカスタマイズするケースも多くありますが、売上10億を越える規模の企業は業界・業態特化型を選ぶとカスタマイズが減り初期コスト的を抑えることができます。

6.2.自社と同じ業種・会社規模の導入実績がある製品を選ぶ

販売管理システムを選ぶ際は、自社と同じ業界・業種向けのパッケージであり、かつ同じ位の会社規模に導入実績がある製品を選びましょう。同じ業界・業種で、かつ同じ位の規模の企業への導入実績がある製品であれば、大きな失敗につながるリスクを低減することができます。

販売管理システムのメーカーは「どんな規模の会社にも導入できます」「すべての業界に対応できます」という営業をしますが、簡単に信じてはいけません。必ず本当か実績を提示してもらいましょう。

6.3.サポート体制の強い会社の製品を選ぶ

販売管理システムは、「止めてはいけないシステム」です。システムが止まると、受注や発注、出荷などビジネスへの影響が高い業務が止まることになり、大きな損失につながります。必ずサポート体制の強い会社を選びましょう。下記は特に重要なポイントですので必ずメーカーに確認しましょう。

  • 電話での問合せも可能か?
  • 平均問合せ解決時間は期待する時間未満か?
  • 問合せ対応時間は自社の業務時間を網羅しているか?

7.おすすめの販売管理システム製品3選

この章では、数ある販売管理システムのパッケージの中から知名度が高く、かつ様々な業界別にサービス提供している製品をご紹介します。

7.1.アラジンオフィス

アラジンオフィス

概要

メーカーズシャツ鎌倉など導入実績5,000社以上を誇る販売管理システムです。
アパレルや食品、衣料など様々な業界に特化した販売管理システムを提供しています。価格は非公開ですが、大手IT企業の製品に比べて優しい価格設定であり、多くの企業に支持されています。

対象企業規模

  • 売上高数億~の中小企業

おすすめポイント

  • 高い導入実績
  • 豊富な機能
  • 高いサポート体制
  • コストパフォーマンス(多機能ながら優しい価格設定)

業種別製品・実績

アラジンオフィス_業界別

参考:アラジンオフィス(業種特化型パッケージ)

7.2.販売大臣

販売大臣

概要

「大蔵大臣」で有名な応研株式会社が提供する販売管理システムです。多くの業種・業態に幅広く導入実績があります。

対象企業規模

  • 売上高10億以上の中小企業

おすすめポイント

  • 国内トップクラスの知名度と高い導入実績
  • 豊富な機能
  • コストパフォーマンス(多機能ながら優しい価格設定)

業種別製品・実績

販売大臣_導入実績

参考:販売大臣(導入実績

7.3.オービック7

OBIC7

概要

オービックが提供する販売管理システムで導入実績15,000社以上をほこる製品です。国内トップクラスの知名度を持っています。また、ほぼ全ての業界・業態への導入実績があります。

対象企業規模

  • 売上高50億以上

おすすめポイント

  • 国内トップクラスの知名度と高い導入実績
  • 豊富な機能
  • 高いサポート

業種別製品・実績

 

OBIC7_卸

OBIC7_小売

OBIC7_サービス業

参考:オービック7(豊富な業種・業態向けソリューション)

8.まとめ

この記事では販売管理システムの概要やメリット・デメリット選定時のポイントまで詳しく解説してきました。販売管理システムは業種・業態別に非常に多くのパッケージがあります。どの製品を選ぶべきかは、この記事で述べた「販売管理システムの選び方~3つのポイント」を参考にして下さい。次は、自社に必要な要件を整理してRFPを作成しましょう。