開発責任者に聞くレコメンドエンジン「ファンレコ」徹底解析

富士ソフト株式会社はEC事業者向けに、今までにないレコメンドエンジンである「ファンレコ」をリリースした。レコメンドエンジンは製品が多く、EC事業者は自社に適したレコメンドエンジンを選ぶだけでも多くの労力が必要だ。

今回、EC事業者がレコメンドエンジンを選ぶ際の参考になるよう、「ファンレコ」の開発責任者である富士ソフト株式会社 ソリューション事業本部 インフォメーションビジネス事業部 産業システム部 EC技術グループ 次長の柴田晃宏氏に「ファンレコ」の特徴や向いているECサイトなど詳しく話を伺った。

1.富士ソフト株式会社EC技術グループの概要

- はじめに、富士ソフト株式会社EC技術グループについて教えて下さい。

独立系SIの特性を活かし、お客様のEビジネスに関わる全てのサービスを、お客様に最適なソリューションとしてワンストップかつ長期で支援します!これまでに、アパレル・アクセサリー、化粧品・ヘルスケア商品、食品・飲料、書籍・映像音楽ソフト、家電・PC関連など、さまざまな業種200社以上への導入実績があり、多様なサービス展開や繁雑なコンテンツ管理も高度な技術力を活かしスクラッチ開発で対応できます。

ECサイトだけでなく実店舗の運営・管理、卸販売業務まで幅広く対応したフルフィルメントサービスで、お客様の売上アップ、業務効率化をサポート。システム開発、ECサイトの構築・運営に精通した300人の専門スタッフが、戦略/設計から構築/運用までお客様を全面的にサポートいたします。

2.「ファンレコ」誕生の背景

- 続いて「ファンレコ」誕生の背景を教えて下さい。

「ファンレコ」は一般的なレコメンドエンジンとは異なるまったく新しいものです。
近年のECサイト構築業界は、ECサイトを構築するだけでは多くのお客様から評価を得ることは難しく、お客様の要件を捉え売上を上げていく提案まで行える事業者が求められています。EC技術グループでは、多様化するお客様のニーズにどうすれば応えられるかを日々研究しています。

ECサイトのユーザーがまだ満たされていないニーズに注目

近年のECサイトは、商品情報や検索条件、関連商品など表示手段が豊富になり、買いたいものが決まっているユーザーにとっては使いやすく進化しました。
しかし、買いたいものが明確でない段階や、買いたいものを比較検討している段階のユーザーは「Naverまとめ」や「Yahoo知恵袋」で情報収集をしてからECサイトで買い物をします。つまり、1つのECサイトだけで欲しい情報すべてを得る事ができないため、多くのサイトで情報収集しているのです。

また、ユーザーはレコメンドエンジンによる機械的なレコメンド結果よりも、専門家や他のユーザーのコメントやおすすめを信頼する傾向があります。しかし、専門家や他ユーザーのコメントはすべて読まなければ内容を理解することができず、多くのコメントを読むという労力が発生します。そこで、専門家や他ユーザーのおすすめを「図」で表示できる仕組みがあれば、ユーザーはより便利にECサイトでお買い物できると考え、ファンレコを開発しました。

3.「ファンレコ」の特徴

- 「ファンレコ」の特徴について教えて下さい。

ユーザーがレコメンドしあう場の提供

「ファンレコ」の1番の特徴は、「ユーザーがレコメンドしあう場の提供」を目的にしている事です。
一般的なレコメンドエンジンは、ユーザーの購入履歴や行動履歴をもとにおすすめ商品を表示しますが、「ファンレコ」はそもそも概念が異なります。サイト運営者やユーザー自身がおすすめの商品をさまざまな評価軸からマッピングし投稿します。ユーザーはさまざまなユーザーのおすすめ商品を感覚的に知ることができます。
投稿された商品マップに対してコメントもできるためサイト内コミュニケーションを活性化することができます。

- レコメンドエンジンと一緒に使える
「ファンレコ」は既にレコメンドエンジンを導入しているECサイトにも導入できます。一般的なレコメンドと合せて使うことで更なる利便性をユーザーに提供することができます。

- 商品マップの登録は簡単にできるのでしょうか?
商品マップは下図のように簡単かつ楽しく登録できる仕組みになっています。

二木ゴルフオンライン様

4.「ファンレコ」の導入について

- 「ファンレコ」はどのような商品を扱うECサイトに向いているのでしょうか?

食品、スポーツ用品、本、ゲーム、オーディオ、カメラ、楽器、バイク、時計、宝石、メガネ、コーヒー、食器 …など微妙な違いの商品が多いサイトや趣味嗜好が大きく関わる商品を取り扱っているECサイトに向いています。また、CtoCサイトなど情報交換を目的としたWEBサイトにも活用できます。

「ファンレコ」が向かないECサイトを教えて下さい。

商品数が少ないECサイトや、短期間で商品を売り切り、同一商品は再入荷しないようなECサイトでは、個々の商品をマッピングすることはあまり効果的ではないかもしれません。商品数が少ないECサイトでも、例えば醤油の販売店などは、商品そのものの比較だけなく各商品を使ったオススメ料理をマッピングするなど、様々な活用が可能です。

ファストファッション系のアパレルでは商品が次々に入れ替わりますが、ショップ内の取り扱いブランドやTPO別ファッションの提案、お客様のタイプ別/嗜好別コーディネートなどにマッピングを利用いただくことも可能です。いろいろな視点で自由にマッピングできますので、どのような商品を扱うECサイトでもご活用いただけます。

- 「ファンレコ」を導入する際、対応EC構築パッケージの指定など制約はあるのでしょうか?

サイトによっては導入に手間が掛かるケースもありますが、基本的にどのようなECサイトでも導入可能です。安価なASP型のECサイト構築サービスからフルスクラッチで構築されたECサイトまで幅広く導入できます。

- 「ファンレコ」導入後にサイト運営者側で必要となる業務について教えて下さい。

商品追加時や商品価格が変わった際にその情報を「ファンレコ」に連携させる必要があります。標準機能で画面からCSVで商品情報を連携できるようになっています。連携方法は差分連携および全件連携どちらも可能です。カスタマイズになりますが自動連携のインターフェースを構築することも可能です。
また、商品マップの登録を活性化させるために、導入当初にサイト運営者側が積極的に投稿していく必要があります。投稿数が増えていくと次第にユーザー自身が投稿してくれるようになります。

クラウド型サービスとのことだがプライベートクラウドやオンプレミス(自社サーバでの利用)も可能でしょうか?

基本はパブリッククラウドでの運用になりますが、ご要望があればプライベートクラウドやオンプレミスでの導入も可能です。

5.今後のサービス拡張について

最後に、今後ファンレコに拡張していく機能があれば教えて下さい。

今後時代の流れとして、ECサイト運営者からの一方通行のコミュニケーションではなく、ECサイト内でお客様同士がコミュニケーションできる仕組みがより求められると考えています。そこでファンレコではサイト内でお客様同士がよりコミュニケーションを取れるようサイト内SNS機能を拡充してく予定です。

ファンレコは、ユーザー(ファン)同士、お店のファンや商品のファン、いろいろなファンのいろいろな視点、情報をMAPやSNS機能で、楽しく、よりファンに寄り添ったレコメンドで、サイトの活性化やファンの拡大を図ることを目指しています。

ファンレコは、サービスとしてはまだまだ新しいものですが、当社の確かな技術と経験、先進的な取り組みでファンレコの基盤を拡張、機能を拡充し、これまでにはなかったような気づきや新しい出会いを更に楽しめるサービスにしていきたいと考えています。今後もお客様のさまざまな要望を集めながらよりよいサービスにしていきます。

6.まとめ –編集後記-

今回、「ファンレコ」の開発責任者である富士ソフト株式会社 ソリューション事業本部 インフォメーションビジネス事業部 産業システム部 EC技術グループ 次長の柴田晃宏氏にEC事業者側の視点から詳しく話を伺った。商品ページには「レコメンドエンジン」という名前がついているものの、レコメンドエンジンと似て非なるものであり、よりショッピングするユーザー目線のサービスであるという印象を受けた。

ECサイトのレコメンドは「あなたへのおすすめ」と表示されていても、実際はサイト運営者が今売りたい商品を表示しているだけのものも多い。レコメンドエンジンを導入し、ユーザーの購買履歴や行動履歴からそのユーザーの趣味嗜好にあった商品を表示しているケースもあるが、ユーザー自身はECサイト上でその違いを判断することはできない。

そのような背景もあり、「あなたへのおすすめ」などのレコメンドがあまり参考にならないことをユーザーは気づきはじめている。そして、そのことに着目し「ユーザーがレコメンドしあう場を提供する」という「ファンレコ」の仕組みはユーザーのニーズにとてもマッチしているのではないだろうか。