レコメンデーションとは、ウェブサイトに訪れたお客様の好みにあったコンテンツや関連コンテンツなどをおすすめし、よりウェブサイトを楽しんでもらうための仕組みです。
レコメンデーションを実現するには、レコメンデーションを実現するための「システム」である「レコメンドエンジン」の導入が必要です。この記事では、レコメンドエンジンについてどこよりも分かりやすく解説します。この記事を読んでレコメンドエンジンを導入する際の参考にして下さい。
Contents
1.コメンドエンジンとは
レコメンドエンジンとは、レコメンデーション(レコメンド機能)を実現するための機能を提供する「システム」のことです。別名、「レコメンドシステム」とも言います。ECサイトやニュースサイト、ポータルサイトなど多くのサイトで導入されています。
レコメンデーションについては以下の記事で詳しく解説しています。
あわせて読んでより理解を深めて下さい。
売上に大貢献!ECサイト必須のレコメンデーション徹底解説
2.レコメンドエンジンの主な機能
近年のレコメンドエンジンには、レコメンド機能以外にも多くの機能を持っています。
様々なランキングを表示する「ランキング機能」や、以前見た商品を表示する「リマインド機能」、「メール配信機能」などの機能を持っている製品がほとんどです。
製品の選定を進める前にまずはレコメンドエンジンの主な機能について理解を深めましょう。
2.1.レコメンド機能
レコメンド機能には以下のような様々なタイプがあります。
レコメンドエンジンの製品は多いですが、レコメンド機能に大きな違いはなくなってきています。
機能 |
詳細 |
例 |
アイテムベース |
商品名や商品説明などの情報を元に、今見ている商品と類似性の高い商品を抽出し紹介します。 |
「関連アイテム」 「こちらの商品もおすすめ」 |
協調フィルタリング |
そのお客様の行動履歴を分析し、同じような行動をするお客様が良く見ている商品を紹介します。 |
「この商品を見た人はこんな商品も見ています」 |
協調フィルタリング |
そのお客様の購買履歴を分析し、同じような購買をするお客様が買っている商品を紹介します。 |
「この商品を買った人はこんな商品も買っています」 |
パーソナライズド |
お客様の行動履歴を基にお客様の嗜好性を分析し、リアルタイムでそのお客様が好みそうな商品を紹介します。 |
「あなたへのおすすめ商品」 |
ルールベースレコメンド |
サイト運営者が紹介したい商品を、運営者が定めたルールに従って紹介します。 |
「ピックアップアイテム」 |
これらのレコメンドを使用するにはあらかじめ各種設定が必要です。
設定方法はレコメンドエンジンの製品により異なるため、ここでは割愛します。
2.2.データベース機能
レコメンド機能を使っておすすめ商品などを紹介するには、サイトを訪れたお客様の様々な履歴データをデータベースに蓄積し分析できるようにする必要があります。これらの履歴データを自動で分析できる形に蓄積してくれる機能がデータベース機能です。
機能 |
詳細 |
行動履歴データ |
PCサイト、スマホサイトなどデバイス別にお客様の行動履歴を蓄積します。 |
閲覧履歴データ |
サイト内でお客様がどのようなコンテンツを見ていたのか、その閲覧履歴蓄積します。閲覧履歴を蓄積することにより、お客様は何に興味があるのか、何が好きなのか、嗜好性を分析できるようになります。 |
2.3.ランキング、リマインド機能
様々なウェブサイトでよく見る「ランキング」や「最近チェックした商品」などもレコメンドエンジンを使用すれば感単に表示することができます。
機能 |
詳細 |
例 |
閲覧ランキング |
閲覧数が多いコンテンツのランキングを自動的に作成し表示します。サイト全体でのランキングやカテゴリ毎などのランキング作成が可能です。ニュースサイトなどで多く使われています。 |
「閲覧ランキング」 「アクセスランキング(スポーツ)) |
売れ筋ランキング |
販売数が多い商品のランキングを自動的に作成し表示します。サイト全体でのランキングやカテゴリ別などでのランキング作成が可能です。 |
「売れ筋ランキング」 「売れ筋ランキング(ベッド)」 |
リマインド |
そのお客様が過去に閲覧した商品やショッピングカートに投入した商品(未購入)をお客様に紹介します。 |
「最近チェックした商品」 |
2.4.メール配信機能
レコメンドエンジンの中にはメール配信(メルマガ)機能がついている製品が多くあります。
普通のメール配信システムでは、レコメンド機能がないためメール配信側が送りたい情報をターゲットに合わせて送る形になりますが、レコメンドエンジンに着いているメール配信機能では、そのお客様の嗜好にあった商品をメール配信できるためより効果的です。
機能 |
詳細 |
例 |
協調フィルタリングメール |
そのお客様の行動履歴を分析し、同じような行動をするお客様が良く見ている商品をメルマガで配信します。 |
「この商品を見た人はこんな商品も見ています」 |
協調フィルタリングメール |
そのお客様の購買履歴を分析し、同じような購買をするお客様が買っている商品をメルマガで配信します。 |
「この商品を買った人はこんな商品も買っています」 |
パーソナライズド |
お客様の行動履歴を基にお客様の嗜好性を分析し、そのお客様が好みそうな商品をメルマガで配信します。 |
「あなたへのおすすめ商品」 |
ランキングメール |
そのサイトの売れ筋や閲覧履歴の多いコンテンツのランキングをメルマガで配信します。 |
「ベッド売れ筋ランキング」 |
新着アイテムメール |
新商品や新コンテンツをメルマガで配信します。 |
「おすすめ新着アイテム」 |
ピックアップアイテム |
サイト運営者が紹介したい商品やコンテンツをメルマガで配信します。 |
「ピックアップアイテム」 |
2.5.レポート機能
レコメンデーションは導入して終わりではなく、導入してからもその結果を分析してより効果が上がるようPDCAサイクルで改善を続ける必要があります。
レポート機能は、レコメンデーションの結果を分析しやすいよう集計しレポーティングしてくれる機能です。
とても重要な機能ですが、すべてのレコメンドエンジンに搭載されている機能ではありません。
機能 |
詳細 |
コンバージョン率レポート |
レコメンド経由のお客様、非経由のお客様のコンバージョン率を分析できるようレポーティングします。 |
購入単価レポート |
レコメンド経由のお客様、非経由のお客様の購入単価を分析できるようレポーティングします。 |
アイテム分析レポート |
アイテム毎にクリック率やコンバージョン率を分析できるようレポーティングします。 |
表示場所レポート |
レコメンドが表示されている場所(フッターやサイドバーなど)別にクリック率やコンバージョン率を分析できるようレポーティングします。 |
シミュレーション |
シミュレーションは、結果ではなくこれからどのようなレコメンドが表示されるのか商品ごとに表示してくれるレポートです。 |
3.レコメンドエンジンの製品タイプ
3.1.ほぼすべての製品がASP型
レコメンドエンジンはとても多くの製品がありますが、ほぼ全ての製品が「ASP」と言われる利用型のサービスです。そのため、他のITシステムのように自社でサーバーを立てたりする必要がなく、比較的短時間で導入可能です。自社独自のロジックでレコメンドを行いたい場合は、カスタマイズ可能かメーカーに確認が必要です。カスタマイズ不可の製品も多いです。
3.2.オープンソース型も一部ある
ASP型の製品は初期費用を抑えて比較的短時間で導入できるというメリットがありますが、利用型のサービスのため自社独自のロジックの追加などカスタマイズできないケースが多いです。
どうしてもカスタマイズしたい場合は、オープンソース型の製品を選んでも良いでしょう。
ただし、レコメンドエンジンのオープンソース型製品はとても少ないという現実があります。また、外国製のため使い方の解説記事も少なく使いこなすには高度なスキルが必要です。
そのため自社でウェブサイトにフルスクラッチで機能追加する方法も視野に入れる必要があります。
3.3.著名なレコメンドエンジン
製品名 |
販売会社 |
製品タイプ |
株式会社ブレインパッド |
ASP |
|
株式会社チームラボ |
ASP |
|
株式会社アピリッツ |
ASP |
|
Research Studios Austria |
オープンソース |
4.レコメンドエンジンの費用
レコメンドエンジンは、月額数千円~数十万円まで幅広い価格帯の製品があります。
基本的に価格が高くなるほど高機能製品であり、大規模サイト向けの製品です。
下記表は代表的なレコメンドエンジンの費用です。
製品名 |
初期費用 |
月額費用 |
製品タイプ |
50,000円~ |
9,800円~ |
ASP |
|
32,400円 |
21,600円~ |
ASP |
|
200,000円 |
150,000円 |
ASP |
|
500,000円 |
100,000円 |
ASP |
|
200,000円 |
150,000円 |
ASP |
5.導入までのながれ
導入までの期間 : 約1ヶ月~
導入までの期間は約1ヶ月程度見ておいた方が良いでしょう。
導入期間は、製品や導入するサイト、要件により異なりますので各社にまずは問い合わせてみましょう。製品によっては2週間で導入可能とうたっているものもあります。
5.1.要件のヒアリング
レコメンドエンジンのメーカーによるヒアリングを受け、実現したいことや課題など要件を共有します。導入可能かサイト構造を調査してもらわなければならない事もあります。
5.2.提案・見積
提案および見積をもらいます。提案内容と要件がずれていれば、交渉を行い契約に進むか他の製品を探すか判断します。要件が合えば契約に進みます。
5.3.契約
契約を締結します。レコメンドエンジンメーカーの契約フォーマットに合わせて締結しなければならないケースがほとんどです。1年未満解約不可の契約が多いので、途中解約についてもしっかり目を通しましょう。場合によっては変更してもらえるケースもあります。
5.4.設定
ウェブサイトにレコメンドエンジンの設定を行います。レコメンドエンジンの管理画面からの設定やレコメンドタグの埋めこみなどが必要です。初期費用が必要なサービスでは、メーカー側で行ってくれる事が多いです。
5.5.運用開始
実運用を開始します。運用開始後も問合せ窓口を通して様々なフォローをしてくれます。
低価格サービスによっては運用後のサポートが弱いサービスも多くあります。事前にどのようなサポートをしてくれるのか確認します。
6.システム構成
レコメンドエンジンはほぼすべての製品がASP型です。
そのため、自社でサーバーを持つ必要はありませんが、レコメンドエンジンのサーバーと連携するために自社サイトへの各種設定や購買データのインポートなどを行う必要があります。
7.レコメンドエンジンを導入する前に知っておくべき注意点
とても便利なレコメンドエンジンですがいくつか問題も指摘されています。
レコメンドエンジンメーカーがこれらの課題の対応方法を持っていることもありますので聞いてみましょう。
7.1.コールドスタート問題
「コールドスタート問題」とは、レコメンドエンジンにサイト上の行動履歴や閲覧履歴などのデータが溜まるまで、最適なレコメンドを表示できない問題です。導入直後はレコメンドの質が高くありません。
7.2.少カバー率問題
「少カバー率問題」とは、閲覧数が少ないコンテンツやユーザー評価が少ないコンテンツ、購入数が少ない商品が他のページにレコメンドとして掲載されにくい問題です。購入数が少なくても、特定のユーザーに「超ささる」商品というものがあります。このようなレコメンドは苦手な製品が多いです。
このようにレコメンドエンジンにもいくつか課題があります。製品を選ぶ際メーカーにどのような対策が可能か(対策がされているのか)確認すると良いでしょう。
高機能のレコメンドエンジンによっては、これらの問題を解決している製品もあります。
8.まとめ
この記事では、どこよりも分かりやすくレコメンドエンジン(レコメンドシステム)について解説してきました。レコメンドエンジンの機能や導入の流れなど理解が進んだのではないでしょうか?次は自社にあったレコメンドエンジンを選定するフェーズです。
レコメンドエンジンの製品はとても多く、どの製品を選べばよいのか非常に困っている方が多いかと思います。
「これなら選べる!レコメンドエンジン徹底比較」では、費用別やサイト規模別におすすめのレコメンドエンジンの製品を紹介しています。この記事を読んで選定に進んで下さい。