今やグループウェアは大企業だけでなく従業員数人の中小企業まで幅広く導入が進み、企業活動になくてはならない存在となりました。しかし一方で、「グループウェアはどんな企業も入れるもの」という認識から、よく検討せずにグループウェアを導入してしまい失敗につながるというケースも良く見られます。
そこでこの記事では、数多くのシステムを導入してきたプロの視点から、グループウェアを導入・活用する際に必須となる基礎知識についてどこよりも詳しく解説します。
製品タイプ別のメリットやデメリット、選定ポイントなどを知っているだけで失敗する確率を下げることができます。グループウェアを導入済みの企業もこれから導入する企業も、この記事を読んでグループウェアを最大限活用して下さい。
Contents
1.グループウェアとは
グループウェアとは、社内の情報共有やコミュニケーションの円滑化、業務の効率化するためのソフトウェアです。代表的な機能として「メール」「スケジュール」「文書管理」「掲示板」「ワークフロー」「設備予約」など様々な機能を持っています。
グループウェアは、自社でサーバーを構築して導入する「オンプレミス型」とインターネット環境さえあれば導入できる「クラウド型」の2つがあります。双方メリット・デメリットがあります。詳しくは後述します。
2.グループウェア導入の3つのメリット
2.1.全社的な情報共有インフラを簡単に作れる
グループウェアを導入することで全社的な社内情報の共有インフラを簡単に作ることができます。例えば、「掲示板」を使い社長メッセージなど様々な全社的な連絡事項を通達したり、各種マニュアルやFAQをグループウェアに配置し社員がいつでも見られるようにしたりすることができます。
また、近年はタイムライン機能を備えたグループウェアも増えたため、従来の掲示板による「経営層⇒社員」という情報の一方通行から「経営層⇔社員」という双方向のコミュニケーションも取れるようになりました。
2.2.グループでの情報共有の効率化
グループウェアは、全社的な情報共有インフラにもなりますが、その名のとおりグループ内での情報共有ツールとしても強力に威力を発揮します。
例えば、グループで共有して使用・更新するファイルやスケジュールをグループウェアで共有したり、グループメンバーの進捗をグループウェアで管理したりすることにより無駄なコミュニケーションを削減し、情報共有を効率化することができます。
2.3.事務などオフィス業務の効率化・削減
グループウェアの大きなメリットは情報共有だけではありません。ワークフロー機能による各種申請・承認業務の効率化、設備予約機能による設備予約、電話メモなどオフィスで発生する「意外に時間を取られてしまう業務」を効率化・削減することができます。
企業が競争に勝ち生き残っていくには、競争力を生み出す業務に集中できる環境を作らなければなりません。そのためには、何も生まない非生産的な業務を減らさなければなりません。グループウェアを活用することで事務などオフィス業務を効率化・削減することができます。
3.グループウェア導入のデメリット
グループウェアを導入することにより発生するデメリットはほとんどありません。あえて言うのであれば、ITコストが掛かることぐらいでしょう。
グループウェアが使いづらいという声も良くありますが、これはグループウェアのデメリットではなく、自社に合ったグループウェアを導入できなかったという「グループウェアの導入失敗」です。グループウェアの導入を失敗しないためのポイントなどは後ほど詳しく解説します。
4.グループウェアの代表的な機能
この章ではグループウェアの主な機能について解説します。近年のグループウェアは様々な機能を持っています。この章を読んで自社に必要な機能は何か整理してみて下さい。
メール
メールの送受信を行うことができます。有料のグループウェアではメールアドレスの取得まで行える製品がほとんどです。
アドレス帳
社員や取引先など様々なアドレス情報を管理することができます。
タイムライン
タイムラインを活用し双方向のコミュニケーションをとることができます。
メッセージ/チャット
グループウェア上でチャットすることができます。
スケジュール
社員個人のスケジュール登録および他社員や設備のスケジュールを確認することができます。
ToDoリスト
タスクを管理することができます。
掲示板
経営者メッセージなど様々な情報を全社で共有することができます。
ファイル管理
オンライン上で様々なファイルを共有することができます。
ワークフロー
紙で行っていた様々な申請をグループウェア上で行うことができます。
出退勤管理
社員の勤怠を管理することができます。
5.オンプレミス型グループウェアのメリット・デメリット
5.1.概要
オンプレミス型は、自社で用意したサーバーにソフトウェアをインストールして使用するタイプのグループウェアです。
基本的に従業員1,000人以上の大企業向けと考えて良いでしょう。
5.2.オンプレミス型の3つのメリット
メリット1:カスタマイズ性
オンプレミス型は自社の要件に合せてカスタマイズできる製品が多くあります。カスタマイズすることにより、自社に最適なグループウェアを構築することが可能となります。大企業は要件も複雑化するため、オンプレミス型を使っている企業が多くあります。
メリット2:セキュリティ
オンプレミス型は、自社で管理するサーバーでデータ管理できるため、セキュリティの観点からクラウド型製品を導入できない企業でも導入することができます。
メリット3:クラウド型よりコストが低くなることがある
近年クラウド型のグループウェアの人気が高いですが、人数が多い企業ではクラウド型よりオンプレミス型の方が中長期的に見てコストを抑えられる可能性があります。
例えば、2,000名いる企業で1人あたり500円/月のクラウド型グループウェアを利用した場合、5年でトータルコストは6,000万になります。グループウェアは長く使うもののため、大企業はオンプレミス型で購入した方がトータルコストが低くなります。
5.3.オンプレミス型の3つのデメリット
デメリット1:初期コストが高い
オンプレミス型の場合、ソフトウェア購入費用、サーバー購入費用(持っていれば不要)が必要となり、初期コストがクラウド型に比べて高くなります。
デメリット2:内部コストが発生する
オンプレミス型の場合、サーバーのメンテナンスや監視など内部コストが発生します。また、これらの作業はSEが必須となるためSEが居ない企業はオンプレミス型の導入は難しいでしょう。
デメリット3:老朽化時に大きなコストが発生する
サーバーの老朽化やサーバーOSのサポート期間終了時に、サーバー切換えやグループウェアのバージョンアップなどが必要になり大きなコストが発生する可能性があります。
5.4.価格
初期費用:10,000円/1アカウント~
初期費用は利用するアカウント数によって変動するパターンが主流となっています。同時購入数が多いほど1アカウントの価格は低くなり、同時購入数が少ないほど1アカウントの価格は高くなります。
例えば、「サイボウズガルーン」の場合50名だと1アカウント12,000円ですが、2,500名だと1アカウント7,500円までディスカウントされます。価格は製品により大きく異なります。
また、アカウント費用と別にサーバーやサーバーOSなどインフラ購入費用が発生します。インフラを持っていれば不要です。ない場合は企業規模によりますが、最低100万はインフラ費用を見た方が良いでしょう。
ランニング費用:0円~
オンプレミス型の場合、保守料という形で年間費用が別途発生します。そのかわり、問合せや障害時のサポートをしてもらえます。
5.5.オンプレミス型が向いている企業
- ユーザー数が1,000人以上の大企業
- カスタマイズしたい企業
- 自社管理サーバーでのみデータ管理可能な会社
- 社内SEがいて自社で運用できる企業
上記に当てはまらない企業はクラウド型を選びましょう。
6.クラウド型グループウェアのメリット・デメリット
6.1.概要
自社サーバー不要でインターネットを介して利用するタイプのグループウェアです。近年従業員数人の中小企業から大企業まで幅広く使われています。
6.2.クラウド型の4つのメリット
メリット1:初期費用が無料または数十万程度と安い
クラウド型の一番のメリットは初期費用がとても低いことです。製品によっては一切かかりません。
メリット2:短期間で導入できる
クラウド型の場合、最短即日で利用を始めることができます。規模によっては数週間掛かることもありますが、オンプレミス型に比べて短期間で導入することができます。
メリット3:インターネットとPCがあれば利用できる
オンプレミス型と異なり自社でサーバーを用意する必要がありません。インターネットとPCがあれば利用することができます。
メリット4:機能追加を期待できる
クラウド型の場合、各社のニーズを集めて定期的にバージョンアップや機能追加が行われます。そのため、費用をかけずに新機能を使用することができます。
6.3.クラウド型の3つのデメリット
デメリット1:カスタマイズ不可/または限定的
クラウド型のグループウェアは基本的にカスタマイズできません。できたとしても一部画面表示を変えられるなど限定的です。
デメリット2:セキュリティの懸念
外部サーバーとインターネットを通してアクセスするため、社内サーバーで運用するオンプレミス型に比べてセキュリティのリスクが高くなります。しかし、近年ではクラウドサービスのセキュリティ技術も上がっていますので大きな心配はいらないでしょう。情報漏洩は社内から起きるケースの方が実際は多いです。
デメリット3:従業員が多い企業ではオンプレミス型よりトータルコストが高くなる
オンプレミス型でも述べましたが、従業員数が多くなるほどトータルコストはオンプレミス型より高くなります。例えば、2,000名いる企業で1人あたり500円/月のクラウド型グループウェアを利用した場合、5年でトータルコストは6,000万になります。メリットが多く人気のあるクラウド型ですがコスト面もしっかり検討して導入しましょう。
6.4.価格
初期費用:0円~
クラウド型の場合、初期費用が掛からない製品がほとんどです。
ランニング費用(月額):300円/1アカウント~
製品により1アカウントあたりの価格は異なりますが、大体1アカウントあたり月額300円~800円で使用することができます。利用数が増えるほどボリュームディスカウントで価格は安くなります。
6.5.クラウド型が向いている企業
- 初期費用を抑えてグループウェアを導入したい企業
- 従業員数1,000人未満の企業
- マルチデバイス対応のグループウェアを使いたい企業
- 常に業界最新のグループウェアを使いたい企業
- カスタマイズ不要の機能
- 社外サーバーでのデータ管理を許容できる企業
これらに当てはまらない企業はオンプレミス型で導入を検討して下さい。
7.グループウェア導入を成功させる5つの必須条件
この章ではグループウェアを選ぶ際のポイントについて解説します。
グループウェアは多くの企業への導入が進みましたが、導入の失敗例も多くあります。
よくある失敗例は、「費用が掛かりすぎてしまった」「導入の効果が得られなかった」「導入したのに使われない」の3つです。導入を失敗しないようこの章でしっかりポイントを抑えましょう。
7.1.予算に対して費用は妥当か
初期費用や1アカウントあたりの安さから、数年単位でのコストを考慮せずに安易製品を選んで導入してしまい、後々他製品やオンプレミス型に比べて費用が割高だったと気づくことが多くあります。特にクラウド型のグループウェアは、初期コストが不要だったり1アカウントの月額費用が数百円だったりと安く見られがちですが、利用年数や従業員数によっては費用が数千万規模になることも良くあります。導入前に予算に対してコストが掛かりすぎていないか中長期で検討しましょう。
7.2.製品タイプは自社の要件に合っているか
企業の要件や規模によってオンプレミス型とクラウド型どちらが向いているかが変わってきます。製品タイプの選択を誤ると後々問題が発生してしまうことが少なくありません。前章でオンプレミス型とクラウド型のメリット・デメリット、向いている企業について詳しく解説しました。改めて前章を読んでどちらのタイプが自社に適しているか検討しましょう。
7.3.機能とサービスレベルは要件を満たしているか
自社が求める機能とサービスレベルをリスト化し、選定の際に各製品が満たしているかしっかり整理しましょう。オンプレミス型は機能が豊富で様々な要件に柔軟に対応できますが、入れてみたら肝心のマルチデバイスに対応しておらず営業マンが社外で使えないという事態も良くあります。
サービスレベルの注意点
- 全画面SSL暗号化対応しているか
- IPアクセス制限可能か
- サービス提供時間は24h365日か
- データのバックアップは取られているか
- 障害発生時の復旧時間の目安は許容範囲か
- アカウント数の追加、削減は柔軟に可能か
7.4.導入の目的は明確になっているか
グループウェアは製品それぞれに特徴があり、備えている機能も多岐にわたります。そのため、導入の目的を明確にせず安易に導入してしまうと導入の効果を得られずコストの無駄遣いになってしまうことが多くあります
このようなケースでは、製品のせいにしてしまう企業が多くありますが実際は導入の目的を明確にせずに製品を選んでしまった事が主な原因です。グループウェアに限ったことではありませんが、何のために、なぜ導入するのか必ず明確化し導入前に全社で共有しましょう。
7.5.導入後の定着化計画をしっかり建てているか
システムは導入したら終わりではありません。事前のユーザー教育や運用ルールの明確化、FAQ、マニュアルの作成などを行わなければせっかく導入しても使われないというケースに陥ってしまう可能性が高くなります。どのように定着化させるのか事前にしっかり計画を建てましょう。
8.シェア別の主なグループウェア製品
この章では、参考までにシェアの高い主なグループウェア製品を紹介します。
製品ごとの比較については別記事で徹底的に解説します。
〈製品タイプ別シェア〉
富士キメラ総研の調査によると、シェアは上図のようになっています。自身でシェア1位を語っているメーカーがいくつもありますが、こちらは第三者による調査結果のため信頼できるデータと見て良いでしょう。
8.1.オンプレミス型
シェア1位:IBM Notes(日本IBM)
元々はLotus社が提供していたグループウェアで早くに日本に進出したため、今でも多くの企業に使われています。筆者としては、Notesのシェアが未だに高いことに驚きです。(使っていた経験もあります)オンプレ型でシェア1位ですが、使い勝手もビジュアルも悪い印象です。使いづらいというユーザー評価がネット上にたくさんあります。
シェア2位:Exchange Server(日本マイクロソフト)
マイクロソフトが提供するオンプレミス型のグループウェアです。Office製品との親和性も高く、使い勝手も良いため多くの企業で利用されています。
シェア3位:サイボウズガルーン(サイボウズ)
サイボウズが提供する国産のグループウェアです。サイボウズ製品はユーザービリティとデザイン性が高く人気があります。
シェア4位:desknets NEO(ネオジャパン)
こちらも国産のグループウェアで人気の高い製品です。他製品に比べて低価格なイメージです。
シェア5位:StarOffice(NEC)
NECが古くから提供しているグループウェアです。近年あまり名前を聞きませんが、大企業や官公庁系に多く導入されています。
8.2.クラウド型
シェア1:Office365(日本マイクロソフト)
クラウド型シェアNo.1は、やはりマイクロソフトのOffice365です。業務ツールとしてOffice製品が圧倒的に強いので必然的にこの分野もマイクロソフトがシェアを占めています。
シェア2位:Google Apps(Google)
クラウド型シェア第2位はグーグルのGoogleAppsです。マイクロソフトとグーグルで約75%という驚異のシェアを得ています。個人でgメールやGoogleカレンダー、Googleドライブを使っている方も多いので、企業にもスピーディに受入れられました。
シェア3位:IBM SmartCloud Notes
IBMが提供するグループウェアである「Notes」のクラウド版です。古くからNotesを使っていたユーザーに人気があります。
シェア4位:サイボウズOffice(サイボウズ)
シェアは他製品に比べて下がるものの、それでも50,000社以上の導入実績があります。サイボウズOfficeはユーザービリティが高いため、中小企業を中心に導入が進んでいます。
シェア5位:desknets NEO(ネオジャパン)
オンプレミス型でシェア4位だったdesknets NEOのクラウド版です。こちらの製品も中小企業を中心に広く導入されています。
9.まとめ
この記事では、グループウェアを導入・活用する際に必須となる基礎知識についてどこよりも詳しく解説してきました。製品タイプ別のメリットやデメリット、選定ポイントなど理解することができたのではないでしょうか。次は自社の要件や導入の目的を明確にしましょう。既に明確になっている方は製品比較記事を参考に自社に最適な製品の選定に進んで下さい。