お客様の心をつかみ売上アップにつなげるための戦略としてよく導入されるのがポイントサービスです。ポイントサービスは「優良顧客(リピーター)の獲得」や「顧客満足度向上からの売上UP」など多くのメリットがあります。
しかし、なぜポイントサービスが「優良顧客(リピーター)の獲得」や「顧客満足度向上からの売上UP」に効果があるのか、理解されていない方が多いのではないでしょうか。
正しい理解をせずポイントサービスを導入してしまうと、費用対効果に見合わない運用費にも悩むことになってしまいます。
この記事では初心者や既にポイントサービスを導入している人向けに、ポイントサービスを成功に導くための基本を分かりやすく徹底的に解説します。
この記事を読めばポイントサービスを成功させるための基本を学ぶ事ができます。
Contents
1.ポイントサービスとは
1.1.ポイントサービスの概要
ポイントサービスとは、実は和製英語であり、英語では「ロイヤリティ・プログラム(Loyalty program)」と言われるマーケティング施策のひとつです。
マーケティング施策であるポイントサービスの導入目的は「お店や会社に対して、親密性や信頼性を持ってもらう」ことです。
ポイントサービスはお客様へのサービスの質を向上させ、お店のファンとなってもらうことで、来店回数や購買の機会を増やすことを狙いとしています。
お店のファンとなってもらうためには、継続的なコミュニケーションと最適な接客を行うことが欠かせません。これらを実施するためには、下記の2点が必要となります。
- 顧客を「個」客として認識する
- 「個」客の持つニーズ・行動パターンを分析・認識する
ポイントを発行することでお客様とのつながりを作り、ポイントの利用履歴に蓄積されるデータをもとに来店頻度や購買行動の分析を行い改善策につなげていきます。このようにポイントサービスを活用することで、お客様のことを深く理解してサービスの品質を向上させ固定客を増していくことができます。
1.2.ポイントサービスの導入効果
1.2.1.お店のメリット
ポイント1:リピート客の獲得
ポイントを配ることにより、リピート客を獲得することができます。特に「女性」はポイント収集意欲が高く、ポイントカードの有無でどのお店で商品を買うか決めることも多くあります。一方「男性」は一般的にポイント収集意欲が高くありません。そのため、特に「女性」向けのショップはポイントサービスを導入するとより効果が大きいでしょう。
ポイント2:お客様の来店・購買情報データを蓄積し分析ができる
ポイント会員になっていただく際にお客様情報を入手する事ができます。これによりポイントカードを提示して頂いたお客様の購入履歴が分かり、継続的にお客様の購買行動分析が行えるようになります。
その結果としてPDCAサイクルで販促活動をする事ができます。
- Plan(計画):販促活動計画を立てる
- Do(実行):計画の実行
- Check(分析):購入履歴から効果分析する
- Action(改善):改善策を練る
ポイント3:お客様とのコミュニケーション機会の獲得・増加
お客様との接点ができるため、単純な購買だけでは生み出せない来店機会の向上や口コミなどによる販促のチャンスを多く作ることができます。
また、顧客情報をもとに電話営業やダイレクトメールなどの送付、メール配信など様々な情報発信を行うことでお客様とのコミュニケーション機会を増やすことができるようになります。
1.2.2.お客様のメリット
「お得」なサービスが受けられる
ポイントサービスは、お客様にとっては実質的な「値引き」です。来店回数や購入金額に応じて割引やおまけ特典のサービスを受けられます。現金値引きと同等なサービスを受けられることは、通常の商品購入では得られない大きなメリットです。ポイントが自然に貯まっていくことが楽しく喜びを感じるという方もいます。
ですが、最近では多くの店舗・企業ですでに導入がされておりいろいろと比較をされてしまいます。還元率が極端に悪かったりポイントが貯まりにくかったりと、お得感が感じられないものは嫌がられることになります。後述しますが、こうした状況を避けるためにもお客様に受け入れられるポイントサービスを作ることがとても大切です。
2.先人に学ぶ2つのポイントサービス導入事例
2.1.成功例 ~食品・衣料スーパーのオギノ(甲府市)~
山梨県を中心に36店舗を展開するスーパーのオギノでは、ポイントカード会員は県内人口の半数近い約42万人で、会員への売り上げ比率は 95%以上を占めるお店です。しかし、商圏人口の減少と急速な高齢化が進み、既存顧客の売上拡大が課題となっていました。
オギノは従来のCRM(顧客関係管理)に行き詰まりを感じており、旧ポイントサービスを見直しや販売情報のリアルタイム把握や、販売商品からお客様をたどれる仕組みを構築しました。これにより、購入する商品の傾向から顧客のライフスタイルを把握し効果的な販促を行うことができるようになりました。
また、ポイントサービスと合わせて以下施策を行いより大きな成果につなげました。
施策1:レシートに販促情報やクーポンを印字
商品を購入したユーザーに合わせて興味を示しそうな情報やクーポンをレシートに即時に印字できるようにすることでクーポンの利用率は、約30~40%ほどになりました。通常、特定多数の人にクーポンを発行した場合、一般的な利用率が数%なのでかなり高い効果であることが分かります。クーポンの発行は、新商品の販促を強く影響を与えます。狙いを定めた顧客にクーポンを提供したところ、クーポンの利用者のうち40%以上が、その商品を1週間以内に再購入するという効果を挙げることが出来ました。
施策2:購入情報を分析し陳列を変える
お客様の購入情報を分析し店舗ごとに陳列を変えることで売上拡大につながりました。
例えば、自炊をしたいが野菜を切るのが面倒という「時間節約系」のお客様が多い店舗では、陳列方法を変えてカット済みの玉ねぎと「玉ねぎがあればすぐできる」というポップを貼り、「エビチリの素」を隣り合わせに並べました。この陳列を始めてから、カット野菜と中華の素の売り上げを2~4 割増やすことに成功しました。
この事例から、ポイントサービスを通して顧客情報や購買情報を取得し、販促活動につなげていくことで売上を増やせる事が理解できたのではないでしょうか。
2.2.失敗例 ~すかいらーくグループの「クラブラーク」~
ポイント還元率を高くしすぎたことによる利益圧迫
「クラブラーク」は、2001 年にポイント還元率を5%から10%に変更を行いました。この還元率により、低価格帯で勝負をしているすかいらーくの販売促進費用が経営を圧迫する事になってしまいました。
しかもポイントが満点に到達していないままインターネット上でカードが売買される、合算されてしまうことで予想以上に満点となるものが多く発生し金券を大量に発行することになりました。還元率とポイントの消化率が予測から大きく外れることで、ポイントカードからの撤退することになりました。
ポイントサービスを設計する際に、ポイントの還元率の設計の難しさに加え、有効期限や他人のポイントを合算できないなどの利用規約などをきちんと定めておく必要があったという失敗例です。
3.ポイントサービスを導入するための4つのステップ
さて、いよいよ自社のポイントサービスをどのようにするかを考えていきます。どうすれば、お客様を惹きつける魅力を持たせることが出来るのか、導入検討の流れとともに重要点を押さえていきましょう。
ステップ1:準備 ~ポイントサービスを企画・設計する前に顧客分析を行う~
企画を行う前に顧客分析をしっかり行う必要があります。顧客分析を行う前にポイントサービスを作り始めてしまうと、ポイントサービスを始めたがお客様が使ってくれないという事態が発生する可能性があります。
まずは来店頂いているお客様を知ることから始めて下さい。現時点では顧客情報の蓄積がないはずなので、来店回数の多いお客様の声を直接聞いてみるなどで情報を集めておくと良いでしょう。
ステップ2:企画・設計 ~どのようなサービスにするかのイメージを具体化しよう~
ポイントサービスの具体的なイメージを作成しましょう。「誰に、何を、どれくらい特典として与えることが最も効果的か」を考えていきます。とは言え、初めから特定の顧客にターゲットを絞ることはせず、まずはすべてのお客様にポイントサービスに参加してもらえることを目標としましょう。ロイヤリティ・プログラムの考え方や成功した事例を参考に、以下の点が満たされていることを確認しながら進めると良いでしょう。
- 誰にでも分かりやすく、参加しやすいこと
- 魅力的な付加価値(特典)のあるサービスが受けられること
- ポイントが貯めやすく、特典の交換がしやすいこと
- 利用しやすく、楽しめる仕組みづくり
- 安易な現金値引き(還元率勝負)をしないこと
ステップ3:導入・運用シミュレーション ~ポイントサービス運用イメージを持っておこう~
具体的なイメージができた段階で、運営体制や業務イメージを含めて問題なく運用が行えるか想定しましょう。サービスの改善や新規サービスの検討・提案する体制が整えられないのであれば、人材教育や人事採用・外部委託などの必要があります。最悪の場合、ポイントサービス自体をあきらめる判断が必要である事もあります。
ステップ4: システム導入検討 ~ポイントサービスの実現方法を探る~
ポイントサービスを始めるには以下2つの方法があります。
- 自社でポイントシステムを導入し独自ポイントサービスを構築する
自社の目的や要件に合ったポイントサービスを始めることが可能です。安価で使い勝手の良いポイントシステムもあるため、個店や小規模チェーン店は独自でポイントサービスを構築した方が良いでしょう。ただし、ポイントカード加入者を増やすためにクーポンを配るなどしないとなかなか加入者を集めることは難しいでしょう。ポイントシステムの導入については別記事で詳しく解説します。 - TポイントやPontaなど外部のポイントサービスに加入する
外部のポイントサービスは、一定の参加条件や顧客情報の詳細分析ができないなど利用の制約はありますが、顧客認知度による集客力やお店への信頼度の向上が期待できます。そして何よりもお客様が普段利用しているポイントを自分のお店でも利用できるのでお客様のカード発行などに対する敷居が大きく下がる魅力があります。
4.ポイントサービスを始める前に知っておくべき3つの注意点
最後に導入時において比較的見落とされがちな注意事項を解説します。
注意点1:ポイントの有効期限を設定し失効処理をきちんと行う
ポイントの有効期限を設定しないと未使用ポイントがどんどん増えていきます。つまり、負債がどんどん膨らむことになります。ポイントが失効されるよう有効期限をしっかり設定しましょう。有効期限だけでなく必ず利用規約やポイント規約を作成して下さい。
注意点2:ポイント引当金の計上方法について確認する
会計上多くの場合付与したポイントは負債となります。経理上の対応方法が複数あるため、事前に税理士や会計士に相談しておいた方が良いでしょう。
注意点3:ポイントサービス普及のための広告・宣伝費を計画に入れておく
ポイントサービスに短期間で多くのお客様加入してもらうには、ポイントカード作成時のポイント還元キャンペーンやポイント倍増キャンペーンなどの広告・宣伝費が必要となる場合があります。大企業では、ポイントサービス開始時のポイント還元キャンペーンに1億円以上かけるケースも珍しくありません。小規模のお店であればポイント還元ではなくノベルティなどで対応しても良いでしょう。
5.まとめ
この記事ではポイントサービスの基本を詳しく、そして分かりやすく解説してきました。
ポイントサービスの理解がだいぶ進んだのではないでしょうか。ポイントサービスを成功させるには多くの努力が必要です。ポイントシステムの導入も必要になります。次はポイントシステムについて学び理解を深めて下さい。