法人向けクラウドストレージを比較!容量以外の選定ポイントとは

クラウドストレージは、現代の企業が抱える様々な課題(セキュリティ、BCP・DR対策、)を解決するソリューションとして注目されています。ただし、製品ごとに容量や機能、価格などが異なるため、自社の課題にマッチしたサービスを選んでいきたいところです。ここでは、同時利用可能な人数やセキュリティの高さなど、単純な容量以外の面も重視しつつ、法人向けクラウドストレージの主要製品を比較しています。

1. 法人向けクラウドストレージの特徴

まず、法人向けクラウドストレージの特徴について、簡単に解説します。法人向けとはいえ、クラウドストレージの基本的な機能は、個人向けと大差ありません。ただし、以下の点で個人向けソリューションより優れています。

○法人向けクラウドストレージの強み

・アップロード可能容量の大きさ

個人向けクラウドストレージは、5GB~30GB程度の容量が主流です。一方、法人向けクラウドストレージは最大1TB~容量無制限のプランが一般的と言えます。

・スケーラビリティ

有料オプションでの容量追加が容易に行えます。

・転送速度の速さ

法人向けクラウドサービスの一部では、安定した転送速度を確保し、可用性の高さをアピールしています。

・高いセキュリティ

IPアドレス・デバイス・アプリケーションなどを指定した接続や、情報漏洩対策、不正アクセス対策機能、アクセス権限管理機能などが設けられています。

・豊富な管理機能

強制ファイル収集機能はログ監視機能、期間指定でのファイル削除機能など、データを強力に管理する機能が付与されていることが多いです。

・BCPやDRを考慮したサーバの設置場所

法人向けクラウドストレージのベースとなるデータセンターは、複数の拠点を設けていることが殆どです。万が一片方の拠点が被災しても、バックアップセンターが稼働することで、サービスが継続されます。

2. 法人向けクラウドストレージの選定ポイント

法人向けクラウドストレージは、「単なるデータの保管庫」以外の役割も期待されています。例えば、共同編集作業用プラットフォーム、機密情報の受け渡し手段、情報共有ツールとして使用されることが多いでしょう。そのため、次のようなポイントを重視すべきです。

・可用性の高さ

クラウドストレージの性質上、「いつでも繋がる」ことは非常に重要な要素です。ビジネスユースでは、可能な限り可用性が100%に近いサービスを選びましょう。

・最大ユーザ数

資料の共同編集作業・閲覧など、ビジネスユースでは、多数の人間が同時にアクセスできる環境が求められます。大企業や官公庁であれば、数千人以上のユーザに対応したサービスが好ましいでしょう。

・サポート体制

法人向けクラウドストレージのサポート体制は、主に「電話」「メール」「チャット」「Webサポート」の4種類です。ただし、一部の海外製サービスでは、サポート体制そのものが存在しないこともあります。また、電話サポートを設けているベンダーは少数です。

・アップロード(転送)可能な1ファイルあたりのサイズ

1ファイルあたりのアップロード(転送)サイズ上限は、数百MB~無制限まで幅広く、サイズが大きいほど、使い勝手が良くると考えて良いでしょう。また、法人向けクラウドストレージの場合、サーバへの接続方法によってサイズが異なることもあります。(ソフトウェアや専用ルータ経由の場合は無制限、Webブラウザ経由の場合は1GBなど)用

・サーバの所在地が自社から離れていること

BCP対策やDR対策としてクラウドストレージを活用するのであれば、自社とデータセンターとの距離も重要なポイントです。データセンターがあまりにも自社に近い場合は、大地震などで共倒れに危険性があります。海外や沖縄、関東と関西など、複数拠点を保有しているベンダーを選びたいところです。

・セキュリティ

前述したように、法人向けクラウドストレージのセキュリティは、個人向けに比べてかなり強固です。ただし、必要以上のセキュリティはかえって使用感を悪化させることもあるため、用途に応じて適切なプランを選択しましょう。オプションやプラン選択によって、セキュリティ強度を変化させられるサービスがおすすめです。

3. 法人向けクラウドストレージ主要5製品の比較

それでは、実際に法人向けクラウドストレージの中から、5つの製品を選び、機能や価格を比較していきます。今回比較するポイントは「容量/最大ユーザID数」「費用」「1ファイルあたりの上限」「可用性」「強み(特徴的な機能、セキュリティなど)」「サポート体制」の6つです。

  Bizストレージファイルシェア G suite Dropbox Business Box OneDrive for Business
容量/ユーザ数 1GB…最大ユーザID数:1000
2GB…最大ユーザID数:2000
3GB…最大ユーザID数:3000
4GB…最大ユーザID数:4000
10GB…最大ユーザID数:10000
100GB…最大ユーザID数:10000
500GB…最大ユーザID数:10000
1TB…最大ユーザID数:10000
Basic…30GB/1ユーザID
Business…容量無制限(ただし5ユーザ未満は1TB)
Enterprise…容量無制限(ただし5ユーザ未満は1TB)
Standard…3TB/1ユーザID
Advanced…無制限/1ユーザID
Enterprise…無制限/1ユーザID
Starter…100GB/1ユーザID(ユーザ数3~10人)
Business…容量無制限(ユーザ数3~無制限)
Business Plus…容量無制限(ユーザ数3~無制限)
Enterprise…容量無制限(ユーザ数3~無制限)
OneDrive for Bussiness Plan1…1TB/1ユーザID
OneDrive for Bussiness Plan2…容量無制限/1ユーザID
Office 365 Business Premium…容量無制限/1ユーザID
費用 初期設定料金:20000円+税
月額基本料金:
1GB…15000円+税
2GB…26000円+税
3GB…39000円+税
4GB…52000円+税
10GB…65000円+税
100GB…95000円+税
500GB…150000円+税
1TB…200000円+税
月額基本料金(1ユーザIDあたり):
Basic…680円
Business…1360円
Enterprise…3000円
月額基本料金(1ユーザIDあたり):
Standard…1250円
Advanced…2000円
Enterprise…要問い合わせ
月額基本料金(1ユーザIDあたり):
Starter…550円
Business…1800円
Business Plus…3000円
Enterprise…要問い合わせ
月額基本料金(1ユーザIDあたり):
OneDrive for Bussiness Plan1…540円相当
OneDrive for Bussiness Plan2…1090円相当
Office 365 Business Premium…1360円相当
アップロードサイズ上限(1ファイルあたり) 2GB(Webブラウザ使用) ・1ファイルあたり10GBまで
・ドキュメント: 半角 102 万文字/ 50 MB まで。
・スプレッドシート: 500 万セルまで。
・プレゼンテーション: 100 MB まで。
・ Google サイト: 1 ページあたりの文字数は半角 20 万文字、1 サイトあたり画像数は 1 万個まで、ページ数は 1,000 ページまで(合計で半角 1,000 万文字まで)。
・その他のファイル: 5 TB まで。
容量に応じて変動 Starter…2GB
Business…5GB
Business Plus…5GB
Enterprise…5GB
15GB
可用性 ◎(95.955%) ○(99.9%) ◎(99.99%) ○(99.9%) ○(99.9%)
特長・強み クラウドストレージとファイル転送ツールが融合したサービス。ユーザー数ではなく容量あたりの課金であるため、使用ユーザ数が多いほど割安になる。

Webブラウザのみで最大2GBのファイル転送が可能という手軽さと、可用性の高さが魅力。送信先制限や上長承認、アクセス履歴といったビジネス利用時のセキュリティ・権限管理を標準搭載している。

また、関東と関西に拠点を持ち、被災時のDR対策としても有効。国産のクラウドストレージサービスとして信頼性、安定性、可用性において高い評価を受けている。
クラウドストレージとグループウェアを融合したサービス。クラウドストレージ機能だけではなく、カレンダーやスプレッドシート、メール機能などが統合されており、チーム間の情報共有・コラボレーションを促進する。

最上位のEnterpriseには、強力な管理者機能が搭載されており、ユーザーごとにアクセス権限や公開設定が可能。情報漏えいなどのセキュリティインシデントが発生するリスクを低減する。
エクスプローラー表示による使いやすさと、柔軟なファイル同期が強みのクラウドストレージ。

シンプルな画面レイアウトと操作性、
マルチデバイス対応、クラウド側にあるファイルをローカルフォルダのように扱える「Smart Sync」を備える。

また、管理者cons-るによるアクセス権限管理、Office365とのコラボレーション機能も特長のひとつ。
Business Plus以上では、コラボレータ数(共同作業者数)が無制限になり、ユーザアクティビティ管理や管理機能、データ損失防止(DLP)や電子証拠開示(eDiscovery)が提供される。

また、Box Relayによるタスク管理・ワークフロー構築も搭載されており、業務効率化対策としても機能する。
OneDrive for Business Plan 2以上では、セキュリティ・コンプライアンス機能が付与され、堅牢性が増す。最上位のOffice 365 Business Premiumでは、Office365アプリケーションが使用できるほか、チームワーク補完機能やオンライン予約機能、共同作業機能などが追加され、グループウェアとしての役割も果たす。

サポート体制 メール(2営業日以内の日本語サポート) 電話・メールにて24時間365日対応 Standard…メール、チャット、電話(営業時間のみ)
Advanced…メール、チャット、電話(営業時間のみ)
Enterprise…メール、チャット、電話(24時間、ただし英語のみ)
Box本体と直接契約した場合は英語のWebサポートのみ。ただし、販売代理店経由で契約した場合は、代理店のサポート体制に依存。 Office 365 Business Premium…電話・Webサポート(24時間)

単純な月額料金や容量単価を見れば、外資系企業のソリューションが優れているように見えます。しかし、1ユーザIDあたりの単価や可用性の高さ、日本語サポートの有無なども含め、総合的に判断することが重要です。

まとめ

本稿で紹介したように、法人向けクラウドストレージは、個人向けとは重視すべきポイントが異なります。月額料金や容量だけを比較対象とせず、安定性や可用性、日本語サポートの有無などを考慮しながら選定するようにしましょう。どのベンダーも、無料プラン(トライアルプラン)を用意していますので、まずは問い合わせを行ってみてはいかがでしょうか。