CRMソフト(パッケージ製品)はとても多くあります。この記事にたどり着いた方は、「製品が多すぎてどれを選べば良いか分からない」という人ではないでしょうか?
CRMはとても多くの製品があります。選択肢は増えましたが、その分選定が難しくなりました。多くの人が日々選定に困っていると思います。しかし、CRM製品名を教えてくれる記事は多くありますが、細かい機能比較まで解説している記事はほとんどありません。
そこでこの記事では、システム部門で数多くのシステムを選定・導入してきたプロの視点から、CRMソフトの機能やコスト、利用形態などを徹底的に調べ比較表にまとめました。
CRMソフトは数多くありますが、実はシェアは決まってきています。この記事では、シェアを占める主要6製品にしぼって比較します。CRMソフトを選択する判断材料にして下さい。
1.一目で分かるCRM比較表~主要6製品~
まずは結論からいきます。CRM主要6製品の概要や機能、拡張性をどこよりも詳しく比較表にまとめました。選定の参考にして下さい。
1.1.【比較表】サービス概要
製品名 |
特徴 |
価格 |
利用形態 |
向いている企業 |
---|---|---|---|---|
高機能 |
3,000円/月/ユーザ~
|
クラウド型 |
機能重視の企業 |
|
他のマイクロソフト連携 |
3,610円/月/ユーザ
|
クラウド型 |
コスト重視 |
|
分析機能に強い |
未公表 |
クラウド型 |
機能重視の企業 |
|
オープンソース版とサポート付き高機能の商用版があり |
無料 |
オンプレミス型 |
コスト重視 |
|
オープンソース |
無料 |
オンプレミス型 |
コスト重視 |
|
中小企業向けに特化 |
無料~ |
クラウド型 |
中小企業 |
|
エクセル |
エクセルのみでできる |
無料 |
|
スタートアップ |
1.2.【比較表】営業支援機能
営業支援機能は、やはり有料サービスの「Salesforce」「Microsoft Dynamics CRM」「Oracle CRM」が無料製品に比べて機能が豊富です。ただし、機能が多ければ良いというものではありません。「使いたい機能があるか」が選定のポイントです。機能が多すぎても使い方を覚えるのが大変です。
営業活動管理 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
日報管理 |
○ |
○ |
○ |
○ |
||
カレンダー |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
商談管理 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
見積 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
売上予測 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
商品管理 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
契約管理 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
文書管理 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
顧客資産管理 |
○ |
○ |
○ | |||
他通貨対応 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
引合管理 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
1.3.【比較表】マーケティング支援機能
マーケティング支援機能は、どの製品も機能的には大きく変わりません。
キャンペーン管理 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
一括メール |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
ソーシャル |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
1.4.【比較表】顧客サポート機能
顧客サポート機能では、電話受付(CTI連携)とカスタマーポータルが必要かによって選ぶべき製品が異なります。どちらも必要であれば選択肢は「Salesforce」のみになります。
電話受付 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
メール受付 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
案件管理 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
エスカレーション |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
FAQ作成 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
マルチチャネル |
メール |
メール |
メール |
メール |
メール |
メール |
カスタマー |
○ |
○ |
○ |
○ |
1.5.【比較表】その他の機能
モバイルはどの製品も対応しています。ここでは在庫管理とプロジェクト管理が必要かで判断して下さい。
モバイル |
Android |
Android |
iPhone |
Android |
Android |
Android |
在庫管理 |
○ |
○ |
○ |
○ |
||
プロジェクト管理 |
○ |
○ |
○ |
○ |
1.6.【比較表】機能の拡張性(マーケットプレイス)
顧客システム単体では機能として提供されていなかったり物足りなかったりしても、製品のメーカ以外のソフトウェアベンダー(サードパーティ)が機能拡張となるアプリケーションを提供できるマーケットプレイスというソフトウェアの販売サイトを用意している場合もあります。無償でも数多く提供されていますので一度マーケットプレイスをのぞいて見ると良いでしょう。
製品名 |
マーケットプレイス名 |
Salesforce.com |
|
Microsoft Dynamics CRM |
|
Oracle CRM |
|
Zoho CRM |
|
Sugar CRM |
|
vtiger CRM |
この章では、主なCRM製品を様々な視点から比較してきました。CRMソフトウェアは多く出回っており、価格が高いものから無料で使用できるオープンソース版までさまざまです。それぞれのサポート、機能、利用形態などが要因になっています。次は、おすすめのCRM製品の特徴やポイントを解説します。
2.おすすめCRM製品の解説(有料版)
有料版のメジャーなCRMソフトは3つです。多くの企業が必要とされる機能が揃っており、大企業から中小企業まで業種を問わずに幅広く使用できるのが特徴です。コストよりも機能やサポートを重視する企業にお勧めです。
2.1.シェアNo.1、業界や企業規模問わず使える「Salesforce.com」
概要
Salesforce.comはCRMソフトウェアとしてはNo.1のブランド認知度です。顧客数は20万社、ユーザ数は600万ユーザにのぼります。営業支援の「Sales Cloud」とカスタマーサービスの「Service Cloud」が主力製品です。
シンプルで直感的なUIが特徴で、ソーシャルメディアとの連携、カスタムアプリケーションの開発やサードパーティアプリケーションとの連携に強みがあります。
AppExchangeと呼ばれるマーケットプレイスが用意されており、そこでは膨大なアプリケーションの中から自分が欲しいアプリを簡単に自社の環境に組み込むことができます。AppExchangeにて提供されるアプリケーションは機能別や業界別に分類されて提供されており、半数以上は無償で提供されています。
機能・特徴
- CRMソフトウェアとしてはシェアNo,1
- 使いやすいUI
- サードベンダーアプリケーションが充実
価格
Sales Cloudには下記の5エディションがあります。
- [Group]3,000円/月/ユーザ
5ユーザまで利用可能で顧客情報管理、営業管理、マーケティング管理機能が含まれます。 - [Professional]7,500円/月/ユーザ
ユーザ数制限がありません。 - [Enterprise]15,000円/月/ユーザ
カスタマイズが可能です。 - [Unlimited]30,000円/月/ユーザ
年中無休24時間体制のフリーダイヤルサポートや無制限のオンライントレーニング等、サポートが充実しています。
利用形態
- クラウド型
向いている企業
- 中小企業から大企業まであらゆる企業で使用できます。
特にソーシャルメディアの活用が必須の場合には向いています。
他のCRM製品と比べると若干高価で、コスト重視の場合は向いていません。
日本航空、日本郵政、ソニー銀行、千葉県千葉市等の企業・団体で導入されています。
2.2.Officeに似たインターフェースの「Microsoft Dynamics CRM」
概要
Microsoft Dynamics CRMはMicrosoft Officeユーザには非常に馴染みのあるインターフェースとなっています。Outlookを利用しているユーザの場合、Outlookにプラグインを入れるだけで、OutlookからDynamicsへアクセスができるようになります。ExchangeやSharePointなど他のマイクロソフトの資産との統合性も高いです。
機能拡張は可能ですが、マーケットプレイスはSalesforce.comのようには充実してはいません。また完全対応しているブラウザはInternet Explorerのみとなります。
機能・特徴
- Microsoft Officeに似たインターフェース
- Outlookや他のマイクロソフト製品との統合性が高い
- 比較的安価
価格
- クラウド型 3,610円/月/ユーザ
- オンプレミス型 100,000円/ユーザ + 保守費用(ライセンスの20%/年)+導入費用(5,000,000円・・・カスタマイズによって異なります)
利用形態
- オンプレミス型とクラウド型を選択できる
向いている企業
- 中小企業、コスト重視
- Microsoft Officeのインターフェースにあわせたい企業
みずほ信託銀行、日本生命保険、芝浦工業大学、三菱地所等の企業・団体で導入されています。
2.3.Oracle製品を利用している企業には「Orcale CRM」
概要
Orcale CRMはデータベース製品を核とする企業向けソフトウェア企業の雄である米オラクル社が提供するCRMソリューションです。世界中の企業で利用されており、特に医療、ハイテク、自動車、保険業界において確固たるポジションを築いています。
機能・特徴
- レポーティングと分析系機能の充実
- Microsoft Officeとの連携
価格
- 8,560円/ユーザ/月~(価格未公表)
利用形態
- オンプレミス型とクラウド型を選択できる
向いている企業
- 大企業
日本アムウェイ、ネスレ日本、伊藤園等の企業で導入されています。
3.おすすめCRM製品の解説(無料版)
CRMソフトウェアは無料で使用できるものもあります。価格プランによっては無料だけでなく、サポートや機能追加の有償版がある場合もあります。コストに厳しくサポートにはこだわらない中小企業、まずは試してみたいという企業にお勧めです。
3.1.オープンソースCRMでシェアNo.1「SugarCRM」
概要
SugarCRMはオープンソースCRMとしては最も普及しています。SugarCRM社が有償版を独自のライセンスで販売する一方、そのコードの一部を無償版としてコミュニティに公開しています。しかし、無償版の日本語版は現在更新が止まっています。
無償(オープンソース)版の主な機能は以下の通りです。
機能
- パーソナルホームページ
- キャンペーン
- Eメールマーケティング
- アクティビティ管理
- リード(見込み客)
- コンタクト (取引先担当者)
- ダッシュボード
- 商談
- アカウント (取引先)
- ケース
- バグトラッカー
- プロジェクトマネージメント
- Eメールクライアント
- 共有カレンダー
有償版はこれにレポート、モバイル、営業日報、チーム管理、商品カタログ、見積り、契約等が追加され、サポートもつきます。
特徴
- オープンソース(一部)
- 無料で使用できるが、有償で機能やサポートを追加することもできる。
- オープンソースのIP-PBX(IP電話交換機)であるAsteriskと連携可能
価格
- オープンソース版のライセンスは無料
利用形態
- オンプレミス型
向いている企業
- サーバー管理を自社でできる中小企業
- 簡易なコールセンターシステムを構築したい企業
ソフトバンクテレコム、新生銀行、IHI等の企業で導入されています。
3.2.有償版並に高機能なのに完全無料な「vtiger CRM」
概要
vtiger CRMはSugarCRMから派生したシステムで、有償版・無償版の区別なく、膨大な機能が100%オープンソースで提供されています。Salesforce.com.に匹敵する機能を備えた中小企業・小規模グループ向けCRM/SFAアプリケーションとして近年人気があります。vtiger CRMをベースとしたF-RevoCRMなど開発の広がりを見せています。
機能・特徴
- 無料で高機能
- 追加機能がプラグインとして多く提供されている(有償のものもあり)
- オープンソースのIP-PBX(IP電話交換機)であるAsteriskと連携可能
価格
- ライセンス無料
利用形態
- オンプレミス型
向いている企業
- サーバー管理を自社でできる中小企業
- 簡易なコールセンターシステムを構築したい企業
中小企業で多くの導入実績があります。
3.3.中小企業にお勧め!「Zoho CRM」
Zoho CRMは中小企業に特化した非常に安価で利用できるCRMです。他のCRM製品と比較しても遜色ない機能が揃っています。
機能・特徴
- 営業プロセスの管理のみならず、見積、受発注、請求までの業務に標準で対応
- ソーシャルメディアとの連携が可能
価格
4つのプランが用意されています。プランを上げるごとに使える機能が増えていきます。
- 無料プラン:(3ユーザまで)
- スタンダードプラン]:17,280円/ユーザ/年
- プロフェッショナルプラン:28,800円/ユーザ/年
- エンタープライズプラン:50,400円/ユーザ/年
利用形態
- クラウド型
向いている企業
- 中小企業
- スタートアップ
- スポット利用
中小企業で多くの導入実績があります。
3.4.おなじみの「Excel」
エクセルでも顧客管理は可能です。フィルター機能を使用すれば、顧客の絞り込みをしてのDM発送といったことも可能です。また顧客管理用のエクセルテンプレートも多く出回っているのでそれらを使用してもいいでしょう。
機能・特徴
- エクセルを使い慣れている人にとってはすぐに使える
- エクセル以外の費用がかからない
価格
- エクセル以外は無料
向いている企業
- スタートアップ
4.その他のCRMシステム
これまであげたものはメジャーなCRMシステムで多くの業界で使用できる汎用的なものです。特定の業界ですぐに使用できる業界特化型のCRMや固有の特徴を持ったCRMも存在しますので紹介します。
4.1.SkyDesk CRM
富士ゼロックス製のCRMシステムです。低価格でシンプルな機能で、富士ゼロックス社がサポートしてくれるのが安心です。
料金:1,520円/月/ユーザ~
利用形態:クラウド型
4.2.顧客創造日報シリーズ
日報を中心とした営業支援機能に強みがあります。一日一枚の日報で顧客管理、商談管理、案件管理等のさまざまな情報の一覧性に特長があります。
料金:4,000円/月/ユーザ~(クラウド型の場合)
利用形態:オンプレミス型、クラウド型
4.3.カスタマーリングス
メール配信機能を中心にしたCRMで、メール配信ソフトの検討している企業には代替えとなります。
料金:9.8万円~(契約件数、契約期間による)
利用形態:クラウド型
4.4.Kintone
サイボーズ社が提供するビジネスアプリを簡単に作成できるサービスです。エクセル感覚で気軽にアプリが作成することもできますし、顧客管理や案件管理といった多くのアプリが無料で提供されています。機能は簡易でいいが、簡単にカスタマイズしたいという企業にお勧めです。
料金:780円/月/ユーザ~
利用形態:クラウド型
4.5.InfoAjast
グループウェア機能が中心に簡易的にCRMが始められます。使う機能だけを選んで導入することができます。
料金:990円/月/ユーザー~
利用形態:オンプレミス型、クラウド型
4.6.Synagy!
キャンペーン管理やメール管理といった顧客とのコミュニケーションを重視したマーケティングに強いCRMです。料金がユーザ数でなく管理顧客数で決まります。
料金:15,000円/月~
利用形態:クラウド
4.7.APPREL CLOUD
アパレル業界に特化したCRMです。ECサイトとリアル店舗の情報を一元管理するほか、ブログやSNS運営などにも対応した機能も充実させています。
料金:未公表
利用形態:クラウド型
4.8.BeSALP
美容業界に特化したCRMです。予約機能やメール配信機能、顧客情報の管理や勤怠情報の管理など、美容業界の経営実態に則したサービスが多数用意されています。
料金:10,200円/月~
利用形態:クラウド
4.9.Sansan
名刺をスキャンするだけでデータ化してくれる名刺管理ソリューションが中心です。名刺情報をもとに顧客管理DBを自動構築したり、メール一括配信を行ったりすることができます。
料金:3,500円/月/ユーザ~
利用形態:クラウド型
4.10.リレーションマネージャー
住宅業界に特化したCRMです。スケジュールや過去の案件情報を管理できます。
料金:16,000円/月~
利用形態:クラウド型
4.11.エネパCRM
新電力業界に特化したCRMです。相手企業のデータを入力するだけで自動的に原単価シミュレーションや新電力切り替え提案書を作成することができます。
料金:未公表
利用形態:クラウド型
5.まとめ
この記事では、システム部門で数多くのシステムを選定・導入してきたプロの視点から、CRMソフトの機能やコスト、利用形態などを徹底的に調べ比較表にまとめました。主なCRM製品の特徴や機能について理解が進んだのではないでしょうか?次は、この実際にCRMメーカーに問合せてみましょう。