「セルフサービスBI」という言葉をご存知でしょうか?セルフサービスBIとは、2015年頃から注目され始めたBIツールの一種で、エンドユーザー自身がその時々のニーズにあわせてデータ抽出やレポート作成、データ分析を行うことができるBIツールの事です。
エンドユーザー自身がレポートをカスタマイズできるBIツールは以前からありましたが、「セルフサービスBI」は、よりエンドユーザーのニーズを満たす次世代型のBIツールとして今後成長が見込まれています。
この記事では、セルフサービスBIの基本やメリット・デメリット、機能や主なセルフサービスBI製品までどこよりも詳しく解説します。この記事を読んでBIツールの選定やリプレイスの参考にして下さい。
Contents
1.セルフサービスBIとは
セルフサービスBIとは、2015年頃から注目され始めたBIツールの一種で、エンドユーザー自身がその時々のニーズにあわせてデータ抽出やレポート作成、データ分析を行うことができるBIツールの事です。従来のBIツールは「定型レポート」が中心でしたが、セルフサービスBIは、非定型レポートやグラフィカルなUI、インタラクティブなデータ分析機能など、多くの機能がありよりデータ分析向けのツールと言えるでしょう。以下の特徴を持っています。
セルフサービスBIの主な特徴
- エンドユーザー自身でExcelやCSVなど様々なデータ取込みやデータ結合ができる
- エンドユーザー自身で抽出項目やレポートレイアウトをカスタマイズできる
- 非定型レポート機能が強い
- グラフィカルで視覚性に優れたユーザーインターフェース
- インタラクティブなデータ分析機能
- 比較的容易な操作性
- クラウド型やクライアントPCインストール型製品も多い
なぜセルフサービスBIが求められているのか
エンドユーザー自身がレポートをカスタマイズできるBIツールは以前からありましたが、制約も多くエンドユーザーの評価は高くありませんでした。
従来のBIツールは、事前に仕様をきっちり決めてから作らなければならず、エンドユーザーへは、「事前に決められた仕様での抽出・レポート出力」という条件付きで提供されます。BIツールで満たせない要件は、BIツールから出力したExcelをエンドユーザーがさらに2次加工しなければなりません。
そして、従来のBIツールは要件が増えるごとにシステム部門でのメンテナンス(改修)が必要となります。メンテナンス(改修)に数週間から数ヶ月掛かることも珍しくありません。システム部門は、エンドユーザーに何も考えずに要件ばかり増やすと不満がたまり、エンドユーザーはシステム部門にスピーディに対応してくれないという不満がたまります。
「ビジネススピード」とデータに基づいて意思決定や業務活動を行う「データドリブン経営」が求められる現代では、従来のBIツールではもはや時代のニーズを満たせなくなりつつあるのです。
2.セルフサービスBIの主な機能
2.1.データ取込
様々なデータの取込み
社内のオンプレミス型のデータベース、AWSやMicrosoft AZULなどのクラウド型のデータベース、ExcelやCSV、サードパーティから提供されるオーディエンスデータなど様々なデータの取込みが可能です。
ドラッグ&ドロップによるデータ取込み
多くのセルフサービスBIはドラッグアンドドロップで様々なデータを簡単に追加・取込むことができます。昨日までの売上データに対して、当日のリアルタイム売上を瞬時に取込むという事も可能です。
データの自動結合
複数のデータソースを項目名から自動的に結合する機能です。この機能によりデータの結合・加工に掛かる時間を短縮することができます。もちろん結合内容を自分で編集することもできます。
2.2.データ分析
ダッシュボード
多くのセルフサービスBIはダッシュボード機能を持っています。エンドユーザー自身でよく使うレポートの登録やテンプレートのカスタマイズを行うことができます。
グラフィカルなユーザーインターフェース
セルフサービスBIは従来のBIよりもデータ分析機能に特化したBIツールです。
そのため視覚性の高いグラフィカルなユーザーインターフェイスが特徴的です。データから新たな発見につながるでしょう。
インタラクティブな分析機能
セルフサービスBIには様々なフォーマットがあらかじめ用意されており、データの集計方法(集計軸)や表示方法を瞬時に切り替えることが可能です。例えば、円グラフで表示されていたものを瞬時に散布図にしたり、グラフや表にしたりすることも可能です。従来のBIでは、集計軸や分析軸の数だけレポートを作らなければなりませんでしたが、セルフサービスBIを使えば簡単に軸の変更を行うことができます。
データの探索・ドリルダウン・フィルター
セルフサービスBIでは、従来のBIよりもドリルダウンやフィルターなどの機能が優れています。従来のBIは、あらかじめ決められた仕様内で使うことが基本だったため、BIツールで満たせない要件はExcelなどに落として2次加工が必要でした。セルフサービスBIを使うことで2次加工を削減することができます。
例えば、「Qlick Sense」は画面の様々な数値をクリックすることで明細を表示させたり、その場で抽出条件や集計条件を細かくカスタマイズしたりすることもできます。
2.3.マルチデバイス
クラウド型やオンプレミス型のセルフサービスBIは、その多くがマルチデバイス対応しています。そのため、インターネット環境さえあれば様々な端末からアクセスして使うことができます。クラウド型であれば場所の制限もありません。
※オンプレミス型はセキュリティポリシー的に、接続できる端末やアクセス場所(社内のみ許可)の制限などアクセス制限を掛けることが一般的です。
3.セルフサービスBIの製品タイプ
セルフサービスBIは以下3タイプの製品があります。それぞれ特徴がありますので要件に応じて選ぶと良いでしょう。
3.1.オンプレミス型(サーバーインストール型)
従来のBIツールと同じく、自社のサーバーまたはAWSなど自社で契約しているクラウドサーバーにインストールして使うタイプです。社内のDWHや基幹系システムなどと、データを自動連携したい場合はオンプレミス型一択です。アクセス制限などセキュリティ対策も柔軟にできるため、売上高が10億を超えるような企業にはオンプレミス型がおすすめです。
3.2.クラウド型(Saas型)
クラウド型で提供されるセルフサービスBIです。ベンダーが提供するクラウド環境にアクセスして使います。中小企業など費用を抑えて使いたい企業向けのサービスと言えます。分析対象のデータを都度手動で取込めばよい企業や社内システムとの自動連携が不要な企業におすすめの製品タイプです。
ただし、セキュリティポリシー的に外部に自社データを預ける事がNGな企業は活用できません。また、膨大な量のデータを扱いたい場合や基幹系システムと自動連携したい企業はオンプレミス型がおすすめです。
3.3.クライアント端末インストール型
エンドユーザーのPCにインストールして使うタイプです。社内のDWHや基幹系システムなどとの自動連携が不要で、かつデータを外部に預けたくない企業に向いています。都度ExcelデータやDWHにアクセスしてデータを取得・分析できれば良いのであれば費用を抑えて導入することができます。
4.セルフサービスBIを成功させるための4つの条件
この章では、セルフサービスBIの導入を成功させるための4つの条件について詳しく解説します。セルフサービスBIは、素晴らしい機能を備えた製品ですが、どんな企業でも使いこなせるものではありません。「以下4つの条件を突破できるか」が成功させるためのポイントです。
4.1.データ分析スキルを持っているか
セルフサービスBIは、様々な機能を提供してくれますが、抽出・加工したデータを活用できなければまったく意味がありません。効果的に活用するには、「データサイエンティスト」や「アナリスト」、「データアーティスト」と呼ばれる人材のスキルが求められます。BIツールの導入だけでなく、組織的な人材の育成・教育が必要です。
求められる主なスキル
- ビジネスに関する深い知識
- ロジカルシンキング
- データ分析手法の知識
- 統計学の知識
- データベース、データ処理の基礎知識
- マーケティング知識 など
4.2.ITリテラシーを持っているか
セルフサービスBIの多くは高機能が特徴となっています。操作性が比較的容易と言われていますが、最低限のITリテラシーがないとフル活用することは難しいでしょう。販売管理システムなど基幹系システムの操作に苦労するような人材では、活用することは難しいです。
4.3.データの散在化に対応できるか
セルフサービスBIでは、エンドユーザー自身が様々なデータの取込みや結合が可能となります。そのため、エンドユーザーや部門が独自に入手・加工したデータが増加していきます。そうなると、部門最適化は進みますが、他部門でも活用できるデータや、全社的に共有すべきデータが共有されないなど、データの散在に拍車が掛かります。
従来のBIツールでは、データはシステム部門が一元管理していましたが、セルフサービスBIでは、逆にこのような課題も出てきてしまいます。よって、全社的にデータを管理・最適化する部門やビジネスフローが求められます。
4.4.データ整備やシステムの運用・管理を行えるか
エンドユーザーの評価が高いセルフサービスBIですが、データの整備やシステムの運用・管理は従来のBIツールと同様に必要です。例えば、リアルタイムに売上分析を行いたい場合、リアルタイムの売上データを入手できなければ、エンドユーザーは分析業務ができません。
よって、セルフサービスBIがアクセスできるデータベース(DWHなど)にリアルタイム売上を格納する仕組みをシステム部門が作らなければなりません。セルフサービスBIおよび、周辺インターフェースの運用・管理もシステム部門の作業になります。
ただし、新規に定型レポートを追加する作業は圧倒的に減るため、システム部門はシステムの運用・管理のみに集中することができるようになります。
5.主なセルフサービスBI製品4選
5.1.Qlick Sense
スウェーデンで設立され、米国に本社を置くQlickが提供するセルフサービスBIです。以前より「Qlick View」など従来型のBIも扱っており、世界100カ国以上で実績があります。「Qlick View」は日本でも実績の高い製品です。
Qlick Senseは「オンプレミス型」「クラウド型」「クライアント端末インストール型」の3タイプを取り揃えています。要件に合わせて選ぶと良いでしょう。
また、「Qlick Data Market」というデータマーケットプレイスもあり、オーディエンスデータなど外部データを購入し連携させることもできます。
5.2.Tableau
Tableauもグローバルで導入が進む、セルフサービスBIの代表的な製品です。「オンプレミス型」「クラウド型」「クライアント端末インストール型」の3タイプを取り揃えています。実績の豊富な経営陣と超高スキルエンジニアが経営・製品開発しており、今後の成長がとても期待されている製品の1つです。
5.3.Power BI
マイクロソフトが提供するセルフサービスBIです。セルフサービスBIの豊富な機能と、標準でデータ連携できる製品の多さが特徴です。マイクロソフトの製品のため、サポート体制の心配もまったくありません。
標準連携一覧(一部抜粋)
5.4.Actionista
「ATOK」や「一太郎」などのオフィス製品で有名なジャストシステムが提供する純国産のセルフサービスBIです。製品タイプはオンプレミス型(サーバーインストール型)のみですが、他製品に比べて使い勝手が容易な印象です。
6.まとめ
この記事では、近年注目を集めている「セルフサービスBI」の基本知識や機能、導入の注意点や主な製品まで詳しく解説しました。セルフサービスBIについて理解を深めることができたのではないでしょうか?
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